伴侶動物の高齢化に伴う行動異常や運動機能の低下は、人と動物が共生していく上で問題となる場合が少なくありません。加齢による認知障害や運動機能低下の機序解明や老化研究のための実験基盤の確立を目指します。
動物の専門家を目指すためには、動物の体の構造や仕組みを理解するのはとても重要なことです。
私達の研究室では、疾患モデルマウスや培養細胞を使って、特に脳や運動に関わるからだの装置に関する研究をしています。
3年生もジェノタイピングができるようになってきました。
脳には多数の神経細胞があり、神経細胞同士が互いに連絡することで、からだ中の働きをコントロールしています。また、からだを動かす骨格筋の細胞は、運動神経からの信号を受けて収縮します。これらの細胞が障害を受けたり、細胞間の連絡が障害されたりすると、人を含めた動物の様々な生理機能や運動に影響を及ぼします。私達の研究室では、これら神経細胞や骨格筋細胞の機能がどのように破綻し、生体に影響を及ぼすのかを明らかにするために研究を行っています。
● 脳の神経細胞は、虚血に対してきわめて脆弱です。そのため、脳梗塞治療戦略において、脳の神経細胞保護作用は重要な課題となっています。脳の神経保護作用を示す現象の一つに「虚血耐性」というものがあります。「虚血耐性」とはあらかじめ障害を与えない程度の虚血状態にしておくこと(プレコンディショニング)で、その後の致死的な虚血負荷に対して抵抗性を獲得する現象のことを指します。実験室レベルでは、海馬などの培養細胞に実験的なプレコンディショニング処置を施すとで、約24時間以降に神経保護作用を認めることで、虚血耐性の獲得を確認することができます。私達はこれまでに、海馬の培養神経細胞を用いて、プレコンディショニング処置1時間後では、逆に神経保護作用を阻害する細胞内経路が活性化されることを発見しました。つまり、虚血耐性の獲得は、神経保護の促進と抑制の両経路の総和として表れている現象であると言えます。従って、虚血耐性を脳梗塞治療戦略に結び付けるためには、虚血耐性の獲得だけでなく、それを阻害する経路の分子メカニズムの解明も重要な課題となります。現在私達は、このメカニズムを解明に取り組んでいます。
なお、本研究の一部はJSPS科研費(18K08827)によって実施されました。
● 加齢に伴い筋肉量が減少し筋力が低下する「サルコペニア」は、人以外の動物でも認められます。私達は、培養細胞を用いて筋肉におこる老化現象の一部を再現することで、
実験動物に代わる、老化研究のための実験系の確立を目指しています。これまでに、培養筋管細胞を用いた私達の実験系で、老化と類似したメカニズムで筋萎縮が起こることを見出しています。
● 運動神経の興奮により、筋肉は収縮します。この運動神経と筋の接合部を神経筋接合部といいます。神経筋接合部は、加齢とともにその形態が変化していくことがわかっています。そして、このような神経筋接合部の形態変化は加齢による運動障害に関与している可能性があると考えられています。私達は、培養細胞を用いて作製した神経筋接合部を用いて加齢性変化を再現したいと考えています。
● FACITコラーゲンファミリーに属する12型コラーゲンは、その役割が十分には解明されていません。私達はノックアウトマウスを用いて、筋損傷からの回復における12型コラーゲンの役割について検討を行っています。
●医薬基盤・健康・栄養研究所霊長類医科学研究センターと共同で、新しい病態モデルマウスの開発に取り組んでいます。
福永優子(教授)
問い合わせ先:yfukunaga@cis.ac.jp
4年生
A. Sedei
K. Kawakami
T. Arima
T. Masuda
T. Segawa
3年生
H. Segawa
N. Tamura
R. Onogi
R. Hayashi
Y. Okada